ベトナムの基礎知識

本コンテンツは、
あすな会計事務所様から特別にお借りして
掲載させていただいております。 ※2013年11月6日更新

ベトナム概要

国名 ベトナム社会主義共和国(Socialist Republic of Viet Nam)
首都 ハノイ(650万人)
最大の経済都市 ホーチミン(750万人)
言語 ベトナム語
宗教 仏教、カトリック、カオダイ教他
人口、面積 ▶9,000万人
▶32.0万k㎡
cf.日本37.7万k㎡、
東京2,187k㎡
▶人口密度:3,531人/k㎡
cf.東京1.5万人/k㎡
一人当たりGDP 1,374ドルcf.中国4,300ドル、インドネシア3,500ドル
時差 2時間
政治体制 社会主義共和国
ビジネス環境 世界銀行が発表する世界の ビジネス環境ランキングでは、世界98位
96位 ヨルダン
97位 グアテマラ
98位 ベトナム
99位 イエメン共和国
100位 ギリシャ
在留邦人数
日系企業数
9,313人、
約940社
対日感情 親日的であり、日本に対して好感を抱く人の割合が非常に高い。

進出形態

ベトナムへの進出形態には、100%独資、合弁企業、支店、駐在員事務所等があります。
支店は一部の金融機関を除き利用されることはありませんので、基本的には、法人又は駐在員事務所となります。
駐在員事務所は、他のアジアの国と同様、営業活動を行わない組織体であり、正式に法人を設立するまでの一時的な組織として使われるのが一般的です。

法人の種類

法人には、一人有限会社、二人以上有限会社、株式会社の3つがあります。

一人有限会社▶出資者が1名の有限会社
▶法的代表者はベトナムに常駐
▶監査役の設置が義務付
▶減資が不可能(譲渡による回収のみ)
二人以上有限会社▶出資者が2名以上、50名以下の有限会社
▶法的代表者はベトナムに常駐
▶出資者が11名以上の場合は監査役会の設置が義務付け
株式会社▶出資者が3名以上
▶設立から3年が経過すると自由に持分の譲渡ができる

駐在員事務所と法人の主な相違点

駐在員事務所法人
営業活動不可
資本金不要必要
設立に要する期間15営業日~数ヶ月1ヶ月~半年
人材要件チーフアカウント(経理責任者)の設置は不要
・代表者は常駐する必要なし
2年目以降はチーフアカウントの設置が必要
・代表者は常駐する必要あり
イニシャルコスト
(設立費用)
ミニマム5万円~20万円ミニマム40万円~60万円
ランニングコスト
(会計、税務、監査、労務等)
ミニマム5万円~/月ミニマム100万円程度/年
決算 無し 有り
法人税、VAT 無し 有り
会計監査不要必要

外資規制

ベトナムにおける外資規制には、(1)業種による規制、(2)出資比率による規制、(3)資本金に関する規制があります。

業種による規制

業種による規制には、条件付投資分野リストと、禁止分野リストがあります。
▶外資企業を対象とした条件付投資分野
放送及びテレビ、文化的製品の生産・出版・配布、鉱物の炭鉱及び開発、通信インフラの整備、郵便サービス、港湾・ターミナル・空港の建設、鉄道等の運輸、水産業、タバコの生産、不動産、輸出入、教育、医療機関等
▶首相承認が必要な投資分野(上記と重複する項目もあります)
空港・港湾の建設及び運営、石油探査、マスコミ、カジノ、タバコの製造、大学の設立、経済特区の設立、電力、アルコール製造、海運、新聞・出版等
▶条件付投資分野(投資総額150億ドン以上)
金融、新聞及び出版、娯楽サービス、不動産の経営等
▶条件付投資分野(外資が入っている場合)
海上輸送、郵便、通信ネットワーク、出版等
▶投資禁止分野
違法ドラッグ、探偵・捜査分野、風俗、基礎化学製品の生産、ベトナムで未許可の治療薬・ワクチン・化粧品等の製造、有害廃棄物を持ち込む事業等

出資比率による規制

自国産業の保護と、WTO等の市場開放との兼ね合いから、一部の産業については合弁による進出が求められる一方、外資100%での参入が可能となる時期が定められています。
(下記は一部です。)

分野外資による出資比率規制開放時期
広告サービス具体的な比率の規制はないが合弁が求められる未定
旅行業同上同上
旅客運搬51%以下同上
農業同上同上

資本金に関する規制

銀行1,500万ドン~、証券会社250億ドン~、保険会社2,000億ドン~、観光サービス2.5億ドン、人材紹介サービス3億ドン等
(1円≒220ドン)
外資規制に関する条文の日本語訳(仮訳)は、JETROから出ています。

小売業について

小売業は、2009年より外資100%による進出も可能になっていますが、実務上は非常にハードルが高くなっています。政府との個別交渉により1店舗目の許可が出たとしても、当該店舗が地元商店に与える影響を審査するエコノミックニーズテストをパスしないと、2店目以降の許認可がでません。しかし、このテストの運用基準が非常に不明瞭であり、どの企業も進出に苦戦しています。
現在、ベトナムで店舗を増やしている小売店は、このテストを考慮して、1店舗目を中心地を外して郊外に出店するか、もしくは大半がFCで展開しているのが現状です。

飲食店

飲食店は、基本的に外資による出店は不可能です。ホーチミン市内にはたくさんの日系レストランがありますが、これらの大半は、奥様がベトナム人で奥様名義で展開をしたり、名義貸し等により進出しているものです。
WTOの加盟により2015年より飲食店も外資に100%解放される予定ですが、実際にどのような運用になるかは予断を許しません。

外貨規制

資金の移動

日本に配当送金するのは、1年に1度のみ、決算後に、税務署の許可を得た上で行うことができます。
期中においても、サービス提供に対する支払、元利金の支払い等による送金も可能ですが、証拠書類を銀行に提出する必要があります。

借入

融資の選択肢は主に3つです。
(1) 親会社が日本で資金を調達し、親子ローンで現地子会社に貸し付け
(2) 現地の外資系銀行から外貨建て(ドル)で融資を受ける
この場合は、資金使途は海外からの輸入やサービスに対する支払い、投資資金等に限られ、かつ中央銀行への事前の申請が必要になります。
(3) 現地のローカル銀行からドン建てで融資を受ける
工場の建設など、現地企業へドンでの支払が必要な場合には、現地でドンを調達するケースがありますが、金利が非常に高いです(15%~20%程度)。

現金の持ち出し

1,500万ドン/5,000US$以上の現金を持ち出す場合、税関での申告が必要になります。

会社法

機関設計

≪一人有限会社≫
『社員(出資者1名)+会長+社長+監査役(1名~3名)』
社員(出資者)は、自分に代わり経営を委託する委任代表者を選出し、委任代表者が最高の意思決定機関である会長となります。そして会長は、事業活動の運営及び自らが決定した事項の執行役として社長を選任します。
委任代表者を複数選任することも可能で、この場合は、選任された委任代表者は社員総会を組織し、この社員総会が最高の意思決定機関となります。
法的代表者は、会長又は社長から選ぶことができます。法的代表者は、日本人が就任することも可能ですが、ベトナムに常駐する必要があります。
その他、1名~3名の監査役を任命します。

≪二人以上有限会社≫
『社員総会(2名~50名)+会長+社長+監査役会(出資者が11名以上の場合)』
基本的には一人有限会社の場合と同様ですが、複数の社員により構成される社員総会が、最高の意思決定機関となります。

各機関

社員総会
普通決議として、経営計画の策定、会長及び社長の選解任等、特別決議として、総資産50%以上の投資、定款の変更、解散等を決議します。
ここでポイントとなるのは、定足数です。
一人有限会社の場合は、会長若しくは社員総会の頭数で決議しますが、二人以上有限会社の場合、普通決議でも出席者の出資総額の65%以上が求められ、この要件はたとえ定款に定めても緩めることができません。
従って、ローカルパートナーと合弁を組んで二人以上有限会社を設立する場合には、出資比率に注意する必要があります。

会長
任期:最長5年
法的代表者となる場合には、ベトナム国内に常駐する必要があります。

社長
任期:最長5年
会長との兼務も可能で、法的代表になることもできます(常駐の必要)。
一人有限会社と二人以上有限会社で要件が若干異なり、二人以上有限会社の場合は、社長は持分の10%以上を保有する必要があります。

労務

ホーチミンの賃金相場

人件費も物価相場と同じく、概ね日本の4分の1程度ですが、アジア共通の状況として、日本語が話せるマネージャークラスの人材は枯渇しています。
リーダークラスで3分の1、マネージャークラスで2分の1程度となり、逆に、人材の豊富なワーカークラスは4分の1よりも下がり、5分の1や6分の1程度となります。

階層日本の相場との比較
非常に貴重な人材日本語で日本本社とやりとり
日本式のビジネスを理解
1/2~1/3
貴重な人材社会人数年、英語、日本語少々1/3~1/4
一般的な人材高卒新人、大卒新人、日本語不可1/4~1/5
豊富な人材中卒、ワーカー1/6以下(1/10、1/20)

上記も踏まえて、ホーチミンの賃金相場です。
マネージャークラス 15万円~25万円
チームリーダークラス 10万円~15万円
スタッフクラス 5万円~10万円
ワーカー 数万円
賃金上昇率は高く、毎年15%程のペースで上がっています。
但し、ドンに対して円も上がっていますので、ドルベースで見ると(実質的な上昇率で見ると)、年5%程度の上昇率となっています。

社会保険

種類概要料率
社会保険疾病手当、産休手当、職業障害手当、職業病手当、死亡及び年金手当が対象2013年は、雇用主17%、本人7%。2014年以降は各1%増加。
失業保険12ヶ月超の労働・雇用契約を締結している従業員が10名以上の場合に対象雇用主1%、本人1%、国1%
健康保険診療、治療、リハビリ、胎児の定期診断、出産、薬、医療用品等が対象
なお、医療費の本人負担は8割
雇用主3%、本人1.5%

会社が負担する社会保険関係の費用は、基本給の21%が目安となります。

その他

ベトナム人を雇用する際のポイントとして、以下のことがよく言われます。
▶ベトナム人は勤勉で勉強熱心、おとなしく、和を重んじる。
▶できないことも「できる」、間に合わない事でも「間に合う」というため、定期的なモニタリングが必要。
▶平等を重んじるため、給与を上げることで却ってモチベーションを下げることがあり、さらにはストに発展する危険性もある。昇給や降格など、他の社員と差を付ける際には、客観的な基準に基づく評価であることを説明できるようにする必要がある。
▶ホーチミンでもストはおきますが、期間も短く、非暴力的です。インドのように数ヶ月間も実施したり、インドネシアのようにスウィーピングを行って工場を荒らすといったことはありません。
その他、人前で叱らない、採用で徹底して選別する、日本の常識(世界の非常識)を持ち込まない、社員の目線を持って対応するといったことは、アジア全般の共通事項として必要です。

不動産

ホーチミンでは不動産の高騰は一段落し、2013年年初現在、底値の状態です。
不動産バブルがはじけ、現在開発中の物件や、建設途中で止まっている物件の多くは、不良債権化し、銀行が所有している物件です。
そのため家賃相場も、他の物価一般と同様に、日本の相場の4分の1を基準に、日系企業が集中する中心地では、3分の1が目安となります。
なお、ホーチミンの家賃の表示は㎡当たりのUSドル単価です。

日本の相場との比較家賃相場(坪単価)
一等地のランドマーク的ビル
(大手銀行、公的機関等が入居するレベル)
3分の135ドル~40ドル/㎡
メイン通り沿い、比較的大きなビルなど
(一般的に日系企業が入居するレベル)
3分の1~4分の1 20ドル~30ドル/㎡
通常(日系企業は好まないレベル)4分の1以下

不動産に関しての主な論点

▶所有権は法律上認められていなく、利用権を取得します。
▶パイロットスキームといわれる制度により、一定の条件を満たす外国人・企業は、居住用アパート(マンション)を所有することができます。但し、所有期間は50年間であり、その後は売却・贈与する必要がありますので、日本でいう所有権とは異なります。
▶礼金は無く、敷金を2~3ヶ月分差入れます。
▶家賃は1ヶ月~3ヶ月ごとの支払が多いです。

初めてのホーチミン出張の方へ

JETROのブリーフィング

JETROホーチミン事務所では、経済事情全般についての相談を受け付けるブリーフィングを無料で行っています。
出張で行かれる際には、まずはこのサービスを活用されることをお薦めします。
特に、現地で作成されているビジネス情報資料は必見です。
http://www.jetro.go.jp/services/briefing/

宿泊エリア

日系企業が中心地に集中しているため、1区のリバーサイド、ドンコイ、グエンフエ、日本エリア近辺が便利でしょう。
日系企業や飲食店がこの近辺に集中しています。

タクシー

Vina Sun(車の横に電話番号が書いてあり、最後が272727)かMai Linh(同じく383838)なら安心です。
名前を忘れた場合でも、アジア共通の基本ルールである、向こうから声をかけてくるタクシーには乗らない、汚いタクシーには乗らないといった基本的な事項を守れば大丈夫でしょう。
英語はあまり通じませんので、地図を見せて移動したほうがよいです。また、ベトナム人も地図を見ながら移動するということにあまり慣れていませんので、大小合わせた地図を用意することをお薦めします。
チップについては下記参照。

交通渋滞

渋滞はありますが、中国の主要都市やジャカルタなどと比較すれば、中心地でのラッシュ時間帯を除いて、それほどストレスを感じることはないでしょう。街全体が小さいので、混んでいてもそれほど時間はかかりません(空港から中心地でも20分~30分)。
但し、バイクが異常なほど多く、交通マナーも悪いため、道路を渡るのに非常に苦労します。中国やジャカルタよりも圧倒的に歩行者には環境が悪いです。

ネット環境

市の中心部や、少し外れたエリアでも、比較的綺麗なレストラン、喫茶店であれば、ネット環境は整っています。
通信速度も、日本ほど速くはないですが、ストレスは溜まらない程度のスピードはあります。

チップ

ホーチミンは白人が多いこともあり、チップの文化があります。
目安としては、レストラン(5%~10%)、タクシー(端数を渡す程度)、ホテルのベッドメイキング(10,000ドン~20,000ドン程度)、また日本人が行くようなエステやマッサージでは、チップ込みの値段になっているか否かを確認し、チップが含まれていないのであれば、50,000ドン程度を渡すとよいでしょう。

コンセント・電圧

プラグはA型とC型の混合が多く、日本人出張者が泊るようなホテルであれば、プラグの変換機は不要です。
また電圧は220V、50Hzですが、最近のPCであれば、アダプターが海外の電圧にも対応していることが多いので、変圧器も持たなくて大丈夫でしょう。

服装

通常の出張であれば、スラックスにカラーの長袖シャツ(上着なし、ノータイ)くらいがちょうどよいでしょう。

治安

一人で歩いて移動しても全く問題無いですが、荷物を持っているときは十分に注意が必要です。ひったくりが多く、さらに麻薬中毒者が多いため、危害を加えて強奪するケースも多いです。実際、現地駐在員で、後ろからバイクで突っ込まれて、倒れているすきに鞄と腕時計まで取られた方や、ナイフで切りつけられた方もいます。
タクシーは安いので、極力タクシーを利用し、荷物を持って徒歩で移動するのは避けたほうがいいです。
荷物を持っていなければ問題無いですが、中心地を外れた細い路地や夜間は、タクシーで移動したほうがよいでしょう。

「あすな会計事務所」は国内での各種業務はもとより、インドネシア、中国、ミャンマー、ベトナム、タイ、シンガポールなどアジア展開を考える企業様の現地での各種サポートを積極的に推進しております。
http://www.asuna-asia.com/

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