インドネシアの基礎知識

本コンテンツは、
あすな会計事務所様から特別にお借りして
掲載させていただいております。 ※2013年11月6日更新

インドネシア概要

国名 インドネシア共和国(Republic of Indonesia)
首都 ジャカルタ(1,000万人弱)
言語 インドネシア語(マレー語の一種)
宗教 イスラム教徒が9割弱であり、世界最大のイスラム国家。
但し、国として宗教の自由が認められており、国教ではない。
人口、面積 2.4億人
189万平方km
cf.日本37.7万平方km、東京2,187平方km
ジャカルタの人口密度は1.5万人/平方kmであり、東京都ほぼ同じ。
所得 中間層と言われる、可処分世帯所得が1.5万ドル~3.5万ドルの層が、2009年の500万人から、2020年には7,000万人になると予想されている。
一人当たりGDPは3,500ドル(cf.中国4,300ドル)、ジャカルタ首都圏は8,500ドル。但し、国民の3割は、1,000ドル未満。
時差 ジャカルタの時差は2時間(東部は1時間、西部は3時間)
政治体制 共和制、大統領制
スカルノ、スハルト、ハビビ、ワヒド、メガワティ(スカルノの娘)、ユドヨノ(現任)。1期5年で2期が最長のため、2014年に大統領選が行われる。
主な財閥 アストラ、サリム、シナルマス等の華僑財閥
ビジネス環境 世界銀行が発表する世界の ビジネス環境ランキングでは、世界129位
126位 ブラジル
127位 タンザニア
128位 ホンジュラス
129位 インドネシア
130位 エクアドル
131位 ヨルダン川西岸・ガザ地区
在留邦人数
日系企業数
約12,500人
約1,300社
対日感情 非常に親日的であり、経済面でも日系企業、日本の製品、商品、ブランドは広く浸透している。特に自動車のシェアは高く、四輪は国内シェアの94.3%、二輪は99.7%を占める。

進出形態

インドネシアへの進出形態は、
(1)法人(独資or合弁)、(2)駐在所、(3)支店 の3つです。
支店は銀行など一部の業種に限られるため、法人か駐在所に限られます。
進出当初から営業活動を行うのであれば法人を設立する必要がありますが、売上が上がるまでに時間がかかるようであれば、駐在所で暫く様子を見て、実際に売上が上がるタイミングで法人に切り替えていくのが一般的かと思われます。
現地法人を設立する場合、外資企業は株式会社(P.T. Perseroan Terbatas)のみになります。

駐在所と法人の主な相違点

駐在所法人
営業活動不可
資本金不要必要
設立に要する期間1ヶ月~数ヶ月数ヶ月~1年
現地採用条件日本人1人に対して現地人3人の雇用が必要日本人1人に対して現地人1人の雇用が必要
イニシャルコスト
(設立費用)
ミニマム25万円~50万円程度ミニマム50万円~150万円程度
ランニングコスト
(会計、税務、監査、労務等)
ミニマム数十万円程度ミニマム200万円程度
その他PE認定のリスク有り独資で設立する場合、商業生産開始から15年以内に、株式の一部を現地法人又は個人に譲渡する必要あり。

外資規制

ネガティブリスト

インドネシアに進出するにあたりまず問題となるのがネガティブリストです。
メーカーの進出が一段落し、今後は非製造業の進出が多くなると予想されますが、例えば、飲食店、美容院、小売などはこの規制にかかりますので、進出にあたっては、事前に十分な検討が必要です。

ネガティブリストの日本語訳全文(仮訳)は、ジェトロ・ジャカルタセンターから出ています。
ネガティブリストは3年に一度改定されるため、次回は2013年に改訂の予定です。

BKPM(インドネシア共和国投資調整庁)

他の省庁に属さない大統領直轄の機関として、投資に関する許認可と相談業務を行います。
内幸町に日本事務所があり、事前にアポを取れば無料で相談に乗ってもらえます。

インドネシア投資調整庁(BKPM)日本事務所
東京都千代田区内幸町2-2-2富国生命ビル23階
03-3500-3878
http://www.bkpm-jpn.com/index.html

外貨規制

資金の移動

中央銀行への報告や税関での手続き等はあるものの、配当、減資、借入、現金の移動など、資金の移動は基本的に自由に行うことができます。

借入

融資の選択肢は主に3つです。
(1) 親会社が日本で資金を調達し、親子ローンで現地子会社に貸し付け
(2) 現地でドルで融資を受ける
ドルで融資の場合、調達金利は、日本で調達する場合とあまり変わらないか、若干高い程度のケースが多いです。
(3) 現地でルピアで融資を受ける
工場の建設など、現地企業へルピアでの支払が必要な場合には、現地でルピアを調達するケースがあります。金利は6%~7%程度が目安です(ローカルの銀行は9%~10%程度)。

会社法

株式

定足数や要件などは異なりますが、自益権、共益権、少数株主権など、株主権については概ね日本と同じです。

株主総会

基本的な仕組みは日本の会社法と同じですが、以下については異なります。
▶株主は2名以上
▶総会の開催は事業年度終了後6ヶ月以内
▶普通決議の定足数は全株主の2分の1以上
定足数を満たさない場合、再度株主総会を開催し、2回目は定足数が全株主の3分の1となる。さらに2回目も定足数を充足しない場合、第3回目の株主総会を開催し、裁判所に定足数の設定を求める。

取締役(取締役会)

▶取締役会を構成するものの、各取締役が会社の機関であり、定款に特段の定めが無い限り、各取締役が会社を代表します。
▶明文の規定はないもの、取締役はインドネシア国内に居住している必要があると考えられています。

監査役(コミサリス)会

▶株主に代わって取締役の職務の執行を監督する点では日本と同様ですが、日本の監査役と大きく異なり、取締役に対する経営のアドバイスや、定款の定めをもって取締役の解任権まで定めることができ、非常に強い権限を持っています。
▶取締役と異なり、各監査役は単独で業務を行うことは認められず、監査役会の決議に基づいてその職務を遂行します。
▶株式会社には必ず1名以上の監査役の設置が求められ、監査役は日本の居住者でも就任が可能です。

会計監査人

上場企業等、一定の会社は会計監査人による監査を受ける必要がありますが、外資企業も必ず監査を受ける必要があります。
監査報酬の相場は、ミニマムで30万円~120万円程度です。

労務

ジャカルタの賃金相場

物価相場である日本の4分の1をベースに考えると分りやすいです。
人件費も概ね4分の1ですが、人材が枯渇するリーダークラスで3分の1、マネージャークラスで2分の1程度となり、逆に、人材の豊富なワーカークラスは4分の1よりも下がり、5分の1や6分の1程度となります。

階層日本の賃金との比較
非常に貴重な人材日本語で日本本社とやりとり
日本式のビジネスを理解
2分の1
貴重な人材社会人数年、英語、日本語少々3分の1
一般的な人材高卒新人、大卒新人、日本語不可4分の1
豊富な人材中卒、ワーカー5分の1、6分の1

上記も踏まえた、ジャカルタの賃金相場です。
マネージャークラス 20万円~30万円
チームリーダークラス 10万円~15万円
スタッフクラス 5万円~10万円
ワーカー 数万円
物価上昇や最低賃金の引き上げもあり、賃金は毎年10%程度の割合で上昇しています。

人材不足

インドネシアでも、マネージャークラスの人材は極端に不足しています。急な経済発展に教育が追い付いていない、もしくは大学は卒業していても、マネージャーとして活躍できるだけの人材の教育が追い付いていないというのは、アジア共通の事情です。

インドネシア日本中国
離職率9.5%8.8%14.0%
大卒率7.0%未満50%弱25%前後

数字だけをみると、日本の8.8%と大差はありませんが、大卒者が全国民の7%に満たない状況ですので、日系企業が求める大卒クラスの人材に限ってみると、人材が相当枯渇しています。そのため、どこの企業でも、優秀な人材に対しては引き抜き合戦が行われている状況であり、ジョブホッピングが行われる下地を作っています。

雇用にあたっての主な論点

▶正社員の解雇は難しく、明らかな就業規則違反があっても、裁判所で解雇の妥当性を争うことになります。裁判は長期化する傾向にありますが、裁判が終わるまで給与を支払う必要があるため、お金を払って依願退職の形を取ってもらうのが一般的です。
また、退職金も労働者に有利な法律となっているため、実務上は、契約社員として2、3年採用し、その後、会社に合う人材だけを正社員にすることが多いです。
▶契約社員として採用できる職種は法律上限定されていますが、実務上は、解釈の範疇で対応していることが多いです。
▶デモ、ストライキ、スウィーピング(バイクなどで工場を荒らす)などが頻発しています。
▶給与総額のうち75%以上を固定給(基本給、役職手当、住宅手当、資格手当など)とする必要があり、この固定給の金額を基に時間外労働手当の単価を算出します。
時間外労働は、固定給を173で割った金額に対し、8時間を超える部分について、初めの1時間は1.5倍、2時間目以降は2倍を支給します。 何を固定給とすべきかについての法律は無いため、就業規則において定めます。

社会保険

国民皆保険とはなっていなく、企業については、労働者社会保障制度に基づき、健康保険、労災補償、老齢給付、死亡保障に加入します。

種類概要料率
健康保険労働者及びその家族に対する外来診療、入院診療、分娩、薬剤などの現物給付全額雇用主負担未婚者は固定給の3%、既婚者は6%
労災補償障害に応じた補償金の給付全額雇用主負担業種に応じ0.24%~1.74%
老齢給付積立制で55歳満期一時金又は5年間の分割支給全額雇用主負担0.3%
死亡保障埋葬費及び見舞金の給付両者負担雇用主3.7%、労働者2%

その他

インドネシア人はとても温厚で、日本人には付き合いやすい国民です。
現地企業の中には、インドネシア人のプライドの高さ、仕事に対する責任感、離職率の高さ、社会人としての成熟度、宗教の問題等についてネガティブなことを言う人もいます。
しかし、相対的に見て、アジアの中でTOPクラスに日本人にとって付き合いやすい国民であることは間違いありません。 (1) 採用で徹底して選別する
(2) 日本の常識(世界の非常識)を持ち込まない
(3) 社員の目線を持って対応する
といった基本的なことを心掛ければ、多くの問題は解決できるでしょう。

不動産

家賃相場

他のアジアの中心都市と同様に、ジャカルタでも不動産の相場は毎年高騰しています。
更新時にオーナーが2、3割の値上げを要求することは珍しくなく、実際に、強気の条件でもテナントは入っています。
不動産も、人件費と同様に、物価相場の4分の1をベースに、目抜き通りやランドマーク的ビルであれば3分の1程度を目安にされるとよいでしょう。
なお、ジャカルタの家賃の表示は㎡当たりの単価です(下表は坪単価です)。

日本の相場との比較家賃相場(坪単価)
大型ショッピングモール(商業施設)2分の12万円~3万円
一等地のランドマーク的ビル3分の1~2分の17,000円~1万円
メイン通り沿い、比較的大きなビルなど3分の15,000円~6,000円
通常(日系企業は好まないレベル)4分の1

不動産に関しての主な論点

▶所有権は法律上認められていなく、利用権を取得します。
▶外国人は不動産を取得することはできませんが、法人は取得可能です。
▶礼金は無く、敷金を1、2ヶ月分差入れます。
▶家賃は年単位で前払いの為、入居時に数百万円単位のcashを用意する必要があります。
資金負担とリスクの問題はありますが、家賃が上昇トレンドにありますので、極力長期の契約にしたほうが家賃総額は抑えられる可能性が高いです。

初めてのジャカルタ出張の方へ

JETROのブリーフィング

JETROジャカルタセンターでは、経済事情全般についての相談を受け付けるブリーフィングを無料で行っています。
出張で行かれる際には、まずはこのサービスを活用されることをお薦めします。
http://www.jetro.go.jp/services/briefing/

ジャカルタ・ジャパンクラブ

商工会的な組織であるジャパン・クラブでは、現地日系企業の紹介等を受けることができます。但し、税金で運用されている組織ではありませんので、双方にとりメリットがある話であることを前提に、お願いベースでのコンタクトになりますので、ご注意ください。
http://www.jjc.or.id/

宿泊エリア

日系企業がほとんどSudirman通り沿いに集まっているのと、交通の大渋滞を踏まえると、移動の少ないSudriman沿いか、その近辺に宿泊するのが便利です。

タクシー

ブルーバードかEXPRESSなら安心です。昼間に中心地を移動する分には、他のタクシー会社でも特に問題は無いでしょう。 英語もあまり通じませんので、地図を見せて移動したほうがよいです。また、他のアジアの国と同様、インドネシア人も地図を見ながら移動するということにあまり慣れていませんので、拡大版・縮小版など、複数のサイズの地図を用意することをお薦めします。 チップについては下記参照。

交通渋滞

インドネシアに関する記事には必ず書かれていますが、ジャカルタ中心地の交通渋滞は年々ひどくなっており、向こう数年は悪化の一途を辿ることが確実な状況です。
夕方の時間帯などでは、一部でグリッドロックが生じ出していますので、十分な余裕を持って移動することをお薦めします。 幸い、下記に記載の通り、ジャカルタ中心地のネット環境は整っていますので、早めに次の場所に移動して、PCで仕事をして時間をつぶす、というパターンがよいでしょう。

ネット環境

インドネシア人はネットのリテラシーが高いと言われていますが、実際、大きなビルやショッピングモールに入っているレストランや喫茶店などでは、ほとんどのお店でWi-Fiが使えます。
Sudirumanなど日系企業が入っているビルの周辺エリアでは、ネット環境で困ることはないでしょう。通信速度も、日本ほど速くは無いですが、ストレスは溜まらない程度のスピードはあります。

チップ

チップの慣習はありませんが、タクシーに乗った際は、1,000Rp程度は渡すのが一般的です。遠方に行った際や、夜、お酒を飲んだ帰りなどは2,000Rp程度を渡すのがよいでしょう。
ホテルのベッドメイキングも、1,000Rp~2,000Rp程度を置くとよいです。

コンセント・電圧

Cタイプ(ホテルによっては日本のコンセントがそのまま使えます)
220V、50Hz
最近のPCであれば、アダプターが海外の電圧にも対応していることが多いので、変圧器は持たなくても大丈夫です。

服装

フランクなミーティングはビジネスカジュアルで問題無いですが、ある程度フォーマルなミーティングの場合には、スーツにネクタイのほうが無難です。通常の出張であれば、スラックスに無地の長袖シャツくらいがちょうどよいでしょう。

治安

市街地であれば、一人で歩いて移動しても全く問題無いレベルです。もちろんスリなどは気を付ける必要があるでしょうが、危害を加えられるようなことはまずないです。
中心地を外れた細い路地や夜間は、タクシーで移動したほうがよいです。

「あすな会計事務所」は国内での各種業務はもとより、インドネシア、中国、ミャンマー、ベトナム、タイ、シンガポールなどアジア展開を考える企業様の現地での各種サポートを積極的に推進しております。
http://www.asuna-asia.com/

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(しかし、海外展開に関するご相談はその限りではございません。
 遠慮なくお問合せ下さい。)